📅 2026年5月最終更新
90ディグリーラッチを覚えると、焚き火の自在鉤や簡易トラップを森の素材だけで自作できるようになります。
ナイフ一本で挑んだものの、木が割れたり切り込みが斜めになったり、思うような形にならず悩んでいませんか?SNSでも「コツが掴めない」という声が目立つ技術です。
この記事を読めば、90ディグリーラの正しい削り方と失敗しない木選びの判断基準がわかります。

📌 この記事でわかること
- 90ディグリーラッチの基本構造と4つの実用シーン
- 失敗が連鎖する典型パターンと現場での修正術
- 適したナイフと木材の選び方(生木か枯れ木か)
- 3ステップで削るための具体的な手順と角度
- 練習に最適な「トライスティック」の組み立て方
90ディグリーラッチとは?基本の意味と用途
90ディグリーラッチとは、木の側面に対して垂直(90度)に切り込みを入れ、平面の段差を作るブッシュクラフトの基本カット技法です。英語では「90-degree latch」または「square notch」とも呼ばれます。
名前のとおり、ラッチ(掛け金)のような角の立った段差を作るのが特徴です。木の繊維をあえて直角に断ち切ることで、ロープや別の枝が滑らずに引っかかる形状を生み出します。
主な用途は次の4つに集約されます。
- トライスティックの練習用ノッチ — ブッシュクラフトの基本技10種類を一本の枝にまとめる練習法
- 罠のトリガー — フィギュア4デッドフォールやパイユートトリガーの掛け部
- 自在鉤(ポットハンガー) — 焚き火上で鍋を吊るす高さ調整ノッチ
- テントペグの掛け溝 — ガイラインが滑り落ちないようにする加工
ブッシュクラフトの世界では「90ディグリーラを綺麗に切れる人は、ナイフの基礎ができている」と評価されます。それほど基本かつ奥深いカット技法なのです。
焚き火まわりで自在鉤を使う前提なら、薪の燃やし方の理解も大切です。熾き火の作り方を押さえておくと、自作した自在鉤の真価が発揮できます。
【ここだけの話】挫折する人の共通点

YouTubeのブッシュクラフト動画を見ていると、達人がスッと削っていきます。実は、その動画に映らない失敗が初心者の挫折ポイントの9割です。
キャンプ歴8年の筆者も最初の半年は綺麗な90ディグリーラが切れず、何本もの枝を割ってしまいました。何度も繰り返した結果、挫折する人には共通の3パターンがあるとわかってきました。
パターン1:乾いた枝を選んでいる
地面に落ちている枯れ枝は手軽ですが、繊維が硬化していて90度の段差を作ろうとすると裂けます。生木(立木から落ちてすぐの枝)のほうが繊維が柔らかく、ナイフがスッと入ります。
ただし、立ち木を切るには所有者の許可が必須です。林野庁の公式サイトでも、国有林・民有林を問わず無断伐採は法令違反と明記されています。
パターン2:ストップカットが浅い
90ディグリーラは「ストップカット(止めの切り込み)」を最初に2本入れ、その間の繊維を削ぎ落とすのが基本工程です。ここを2〜3mmしか入れずに削り始めると、削った木片がストップカットを越えて長く裂けます。
枝の太さの3分の1まで一気に切り込むのが正解です。
パターン3:ナイフの研ぎが甘い
切れないナイフで90ディグリーラを切ろうとすると、押し込む力が増えて余計に滑ります。トライスティック練習の前に、必ず刃を研ぎ直してください。ナイフの基礎としてはソングホール(指掛け穴)の使い方も合わせて覚えると安全性が上がります。
削るための道具と木材の選び方

90ディグリーラに必要な道具は驚くほどシンプルです。むしろ「何を選ばないか」のほうが重要になります。
必須のナイフ
フルタング(刃が柄の最後まで通っている構造)のフィクスドブレードナイフが最適です。バトニング(薪割り作業)にも耐え、繊細なカービングにも対応できます。
刃の長さは10〜12cm前後、刃厚は3〜4mm。スカンジグラインド(片刃気味の鋭い研ぎ角)が初心者にも扱いやすく、90ディグリーラの直角を出しやすい形状です。
木材の選び方:6mm〜25mm径の生木
練習段階では親指〜人差し指ほどの太さの生木がベストです。樹種としては次のものが扱いやすいとされます。
| 樹種 | 特徴 | 難易度 |
|---|---|---|
| ヤナギ | 柔らかく繊維が真っ直ぐ | ★(初心者向き) |
| ハシバミ | 適度な弾力で割れにくい | ★(初心者向き) |
| スギ | 柔らかいが繊維が裂けやすい | ★★(中級) |
| サクラ | 硬く美しい仕上がり | ★★★(上級) |
採取場所は環境省の指針に基づき、許可されたキャンプ場や私有地に限定してください。国立公園内での採取は罰則対象になります。
あると便利な補助道具
- バトン用の太枝 — ストップカットを入れる際にナイフの背を叩く
- 革手袋 — 滑り止めと指の保護
- ストロップ — 革のベルトにコンパウンドを塗ったもの。作業中の刃の維持に
焚き火を起こす道具を揃えるなら、ファイヤーブロワーもキャンプの相棒として人気です。
90ディグリーラッチが歪む3つの原因と現場での修正術

「動画通りにやったのに、なぜか斜めになる」「片側だけ深く切れてしまう」——90ディグリーラの失敗は3つの原因にほぼ集約されます。
原因1:ナイフの刃を木に対して垂直に当てていない
ストップカットの段階で刃が斜めに入ると、その後の削ぎ落としもすべて斜めになります。木を地面に対して水平に固定し、刃は真上から垂直に降ろすのが鉄則です。
修正のコツは「鏡で見る」感覚です。一度ストップカットを入れたら、木を90度回転させて切り口の角度を確認します。直角でなければその時点でやり直したほうが早いです。
原因2:削ぎ落としの角度が一定でない
2本のストップカットの間を削ぎ落とすとき、最初の一刀目の角度が以降の基準になります。ここを浅く入れすぎると、平面ではなくV字溝になってしまいます。
正解は、木の表面に対して30〜45度で刃を当て、ストップカットの底面まで届くようにスライスする方法。一刀で深く削るより、薄く何度も削るほうが平面が整います。
原因3:刃の引き方を間違えている
ナイフを押し出すプッシュカットだけで90ディグリーラを作ろうとすると、力が入りすぎて木が裂けます。プッシュとプル(引き切り)を使い分け、最後の仕上げは指先での「サムプッシュ(親指で刃を押す)」が効果的です。
ただし、サムプッシュは指を切るリスクが高い技術です。消防庁のキャンプ事故統計でも刃物による負傷は上位に入ります。革手袋と落ち着いた姿勢が必須です。

📚 もっと深掘りしたい人へ
- キャンプ用ナイフのソングホール完全ガイド — 指掛け穴の正しい使い方と安全性
- 焚き火で熾き火を作るコツ — 自作した自在鉤の真価を引き出す火床作り
- オプティマス8Rの魅力と使い方 — クラシックストーブとブッシュクラフトの相性
💬 SNSのリアルな声と体験者の本音

90ディグリーラの練習について、実際にトライスティックに挑戦したキャンパーの声を集めました。
「最初の3本は完全に枝を割って終了。生木を選んでからは、明らかに切り口が綺麗になりました。乾燥した拾い枝は練習材としては罠でした。」
— キャンプ歴4年・40代男性(東京都・ファミリーキャンパー)
「ストップカットを浅く入れていたのが敗因。バトンで叩いて深く入れたら、削ぎ落としが楽になり90度がピシッと出るようになりました。」
— ブッシュクラフト歴2年・30代男性(神奈川県・ソロキャンパー)
「子供と一緒にトライスティックに挑戦。私が90ディグリーラ、子供がV字ノッチを担当しました。完成した時の達成感は焚き火より盛り上がりました。」
— キャンプ歴6年・43歳男性(埼玉県・小学生の子持ち)
「サクラの枝で挑んだら全然切れず諦めかけました。ヤナギに変えた瞬間にスッと削れて、樹種選びの重要性を痛感しました。」
— キャンプ歴1年・48歳男性(千葉県・ソロキャンパー)
「夫婦キャンプで自在鉤を自作。市販品より愛着が湧いて、家に持ち帰って飾っています。90ディグリーラは焚き火時間の楽しみが一段増える技術です。」
— キャンプ歴10年・52歳夫婦(山梨県・夫婦キャンパー)
90ディグリーラに関するよくある質問

Q1. 90ディグリーラッチとV字ノッチの違いは何ですか?
A1. 90ディグリーラッチは平面と垂直面の組み合わせで「段差」を作る技法、V字ノッチは斜めに2回切り込んで「谷」を作る技法です。前者はロープや枝を引っかける用途、後者は紐を結びつける用途に向いています。トライスティックでは両方を一本の枝に施し、技術の引き出しを増やします。
Q2. 初心者がまず練習すべき木材は何ですか?
A2. ヤナギかハシバミの生木で、親指ほどの太さのものが最適です。繊維が真っ直ぐで割れにくく、90ディグリーラの直角面が出しやすいからです。乾燥した枝は硬化して裂けやすいため、練習段階では避けてください。許可された場所で採取し、所有者不明の枝は持ち帰らないことが大切です。
Q3. ナイフはどんなものを選べばいいですか?
A3. フルタング構造でスカンジグラインドのフィクスドブレードナイフが定番です。刃長10〜12cm、刃厚3〜4mmが扱いやすく、バトニングとカービングの両方に対応できます。折りたたみナイフは強度面で不利なため、本格的に練習するなら専用のブッシュクラフトナイフを一本持つのがおすすめです。
Q4. 90ディグリーラが斜めになってしまうのを直すには?
A4. ストップカットを入れる時点で刃が垂直に降りているか確認してください。木を90度回転させて切り口を真横から見ると、ズレが一目でわかります。途中で気づいた場合は、削り過ぎる前にもう一度ストップカットを正確に入れ直すのが最短ルートです。修正不能になる前のリセットが鉄則です。
Q5. 罠のトリガー作りに使う場合の注意点は?
A5. 日本国内では狩猟法・鳥獣保護管理法により、許可なく罠を仕掛けることは違法です。練習はあくまでトライスティックや教育目的の組み立てに留めてください。実際に獲物を狙う行為は狩猟免許と猟期の制限が必要で、無資格での仕掛けは罰則対象になります。
Q6. 子供と一緒にやっても大丈夫ですか?
A6. 小学校高学年以上で、親が常に手元を見守れる環境ならおすすめできます。革手袋とストップカットの安全な姿勢を最初に教え、最初は親が太枝でデモを見せると失敗が減ります。ただし、ナイフは専用の子供向けではなく、刃の管理がしやすい大人用の小型ナイフを大人が貸す形が安全です。
Q7. 雨の日や濡れた木でも作業できますか?
A7. 濡れた木は表面が滑りやすく、ナイフが横方向にズレて怪我のリスクが上がります。可能なら乾いた状態で作業し、雨天時はタープ下で木材を拭いてから取り掛かるのが安全です。タープの選び方はレクタ型タープの記事に詳しくまとめています。
Q8. 完成したトライスティックの保管方法は?
A8. 直射日光と多湿を避けた室内で陰干しすると、ひび割れずに長持ちします。蜜蝋やオリーブオイルを薄く塗ると、繊維が保護されて経年変化が美しくなります。キャンプギアと一緒に持ち歩く場合は、ノッチ部分が他の道具に当たらないよう布で巻くのがおすすめです。

まとめ:90ディグリーラはブッシュクラフトの登竜門

90ディグリーラッチは、シンプルに見えて奥が深いブッシュクラフトの基本技です。生木を選び、ストップカットを深く入れ、刃を垂直に降ろす——この3点を守るだけで完成度は劇的に変わります。
最初は失敗の連続でも構いません。何本もの枝を割りながら手と目が覚えていく過程そのものが、ブッシュクラフトの醍醐味だからです。
練習を重ねたら、自在鉤を自作して焚き火時間を豊かにしてみてください。熾き火の作り方やファイヤーブロワーの活用と組み合わせれば、キャンプ場での焚き火が一段と充実した時間になります。雨の日対策にはポンチョの選び方や防水透湿素材の知識もぜひ参考にしてください。